義務教育無償化の実現に向けて

学校給食を無償化する自治体が増えている、先進県の群馬県では自治体の6割が完全無償化か一部無料や補助をしているとのこと。市民の運動と共産党議員の論戦が首長の選挙公約にする後押しになっているそうです。嬬恋村の熊川栄村長は「義務教育無償の憲法の理想に一歩でも近づけるのが自治体の長の務めだと考えている」としんぶん赤旗(2018年8月2日付)のインタビューに答えておられます。この記事に触発され、給食費の一部無償化を始めている境港市が、鳥取県で一番に完全無償化に踏み出すことが「子育て王国とっとり」に求められているのではないか、と提案しました。あわせて、できることから就学援助の対象になっているものの完全無償化、就学援助の拡充もとりあげました。

【安田】文部科学省は今年7月27日、公立小中学校の給食無償化に関する初めての全国調査結果を公表しました。2017年度は全国の4.7%に当たる82市町村が給食費を無償化し、人口規模が小さい自治体ほど積極的に導入している傾向が見られたとのことです。小学校のみ、あるいは中学校のみ無償にしている自治体もあるようです。また、本市が第3子以降は無料としているように、部分的に支援しているのは424市区町村(24.4%)。もちろん、第2子以降を無料にしている自治体もあります。

 無償化の目的としては、子育て支援や少子化対策、食育の推進、人材育成などが挙げられています。アレルギーにより弁当持参者には別途助成制度をつくるなど配慮をしている自治体もあります。

 無償化を実施している自治体の中には、首長自ら、憲法262項に書かれている「義務教育はこれを無償とする」という理念に一歩でも近づけるのが行政だ、と明言しているところもあります。

 そこで伺います。①学校給食費の完全無償化を実施、あるいは一部無償化を拡充する考えはないでしょうか。

1951年の参議院文部委員会では、政府委員が、義務教育に必要な経費は無償にする理想を持っており、今は授業料だけだが、教科書、学用品、学校給食費などの無償も考えているが、現在の財政上できないので、今回は一部だけの実施を試みたいと答弁したそうです。それから60年以上たち、当時と比べ物にならないほどの国力を持った今、無償化を進めるのは国の責務だと思いますが、現実は、その後教科書は無償になりましたが、その他は経済的な支援の対象として就学援助によって対応するにとどまっています。就学援助は申請主義ですし、様々な理由で対象になっても申請されない家庭もあり、経済的な問題があっても給食費など学校の費用は払っているという家庭には就学援助の手が届かないという場合もあります。政府の経済財政諮問会議では、給食の無料化の検討が提案され、全国で給食費無償化に必要な財源は年間5120億円という内閣府の試算も示されたそうです。②国の責任で無償化を実現するよう強く働きかけることも必要かと思いますが、いかがでしょうか。

義務教育無償という理念からすれば、給食費以外の、学用品通学用品費用、入学準備費用、修学旅行費用、校外活動費用などの学校教育に必要な費用が就学援助の対象になっていますので、これらの費用も理想を言えば、すべての子どもに場合によっては現物で支給されるべきものと考えます。すべてはもちろん無理だと思いますが、③学用品などは教科教育に直結するものですので、これだけでも全員無償にできないかと思いますが、いかがでしょうか。

 また、全員に無償にはできないにしても、子育て世帯への経済支援として就学援助を充実させることは常に独自の努力が必要です。これまでも入学準備金の支給時期の改善を提案し、それは今年度入学児童生徒から前年度中の支給が実現し、大変喜ばれているところだとおもいます。就学援助の広報の工夫も求めましたが、これについては改善がうかがえず、今後も検討をお願いしたいと思います。さらに、生活保護利用の要保護児童には教育扶助費の中にクラブ活動費、生徒会費、PTA会費相当分が含まれていますが、就学援助のみ利用する準要保護児童には各自治体の判断にゆだねられており、本市では就学援助の対象にされていないのが実態です。④国が学校教育に必要と認めた品目ですので、準要保護児童にも適用すべきと思いますが、いかがでしょうか

 

【教育長】①学校給食法では、学校給食の実施に必要な施設や設備の経費、給食運用に関する人件費などの経費は、学校の設置者の負担とし、それ以外の、給食食材に要する経費のみを保護者が負担するものと定められている。完全無償化を実施した場合、新たな財政負担が生じること、給食費は受益者負担が原則であること、また、給食費は、県内4市の中でも最低基準であることなどから、現時点では、学校給食費の完全無償化は考えていない。一部無償化の制度については、就学援助認定世帯の全額免除のほか、子育て世代への支援対策の一つとして、同一の世帯に学校給食を受ける児童生徒が3人以上いる場合に、3人目以降の給食費を完全免除する制度を導入し、県内4市の中でも、最も充実している状況なので、当面は現行制度を継続していきたい。

②国は、今回初めて学校給食費の無償化などの実施状況を全国の自治体に対し調査した。その理由として、平成28年(2016年)3月の内閣府経済財政諮問会議で、子ども子育て世帯の支援対策に、給食費の無償化が打ち出され、その後一部の自治体や議会から国に対して、速やかな調査の実施と給食費完全無償化の早期実現への要望書が提出された背景がある。国への要望については、県内および近隣市町村の動向を注視するとともに、市長会などの関係団体とも十分に相談・協議をして対応していきたい。

③学用品には、ノートや筆記用具のほか、副読本、副教材、鍵盤ハーモニカ、体操服などの教材・教具が含まれます。これらは個人の所有物にかかる経費であり、学校でも家庭でも使用できるため、学校教育にかかる公費負担の適正化という観点から、保護者に負担をお願いしている。全員無償化については、財政負担も大きくなることから、実施する考えはない。

④就学援助費については、県内3市でもクラブ活動費、生徒会費、PTA会費を支給対象としていないのが現状であり、準要保護児童生徒に支給することは考えていない。就学援助制度の広報については、速やかに対応していきたい。

 

(追及質問)

【安田】①まず、子どもの成長にかかる費用については、私の考えですが、家庭の経済的な状況にかかわらず、社会が責任を持ってまかなうというのが、あるべき姿だと思っている。昨日の質問テーマにあった、保育・幼児教育の無償化について国が制度設計をしたこと、大変歓迎するものだ。また、子どもの医療費については鳥取県内では一部負担があり完全無償化を求めるものだが、高校卒業年齢まで医療費の助成が広がっている。本市の給食費第3子以降無料についても、米子市などからうらやましがられる制度となっていると思う。いずれも、少子化対策や貧困対策の意味もあり、根本的には、子供の成長には社会が責任を持つという考え方で、受益者負担とか保護者負担という考え方ではなく、累進課税での税収財源をもとに、それらの事業を賄うというのが本来の在り方ではないか思う。このことについて、市長、教育長はどう考えるか。

【教育長】学校給食については、学校給食法第11条の中で、設置者としての責任、保護者としての責任、これは保護者と設置者が密接な連携をする中で初めて学校給食は円滑に実施をでき、また健全な発展を図れるといった考えが込められた条項であると理解している。本市が実施している形態は立法趣旨に適った方法で実施していると考えている。

【安田】子どもの成長については社会で責任をもって担うという考えについて市長の考えは。

【市長】地域の宝である子どもたちの健やかな成長を願うということは、大変重要なことである。これは、地域、学校ばかりじゃなくて、行政も保護者もみんながその思いをもって健やかな成長をさせていかなくてはならない。これが大きな考え方なので、行政が完全無償化をやっていくべきではないかというお考えだが、やはり家庭も、保護者もそれには責任を持って、負担をしていくべきものであろうと思う。3者が一緒になってやるべきだろうと、基本的にはこういう考え方をしている。現在、境港市は、子育てするなら境港ということで、財政の問題もありながらも、少子化対策、子育て環境の整備に重点的に予算を投入しているが、これも限りのあることであり、行政も地域も学校も家庭も、みんなが責務を果たしていきながら、子どもの健やかな成長を促していくことが必要だと思っている。

【安田】教育長が言われた、学校給食法に、保護者への負担の分配ということも書かれていて、保護者、家庭も連携してということは理解するところだが、学校給食法に書かれていることが、給食費無償化を妨げるものではないということも、国会の政府答弁の中で出ているということも聞いている。だから、給食の完全無償化が全国に少しずつではあるが広がっていると認識している。完全無償化を実施している自治体が一つもない府県は18と少数派になっています。鳥取県もその一つです。子育て王国鳥取の中で、子育てするなら境港という本市が一番に手を挙げたらと思う。もちろん、一度には難しくても、給食費の半額助成とか、第2子以降の無償化だとか、より若年世代の応援として小学校だけ無償にとか、教育費の支出が多くなる中学校で無償にとか、一部無償化の拡充というやり方もあります。

少しでも憲法の理念に近づくためにはどうすればいいか、という観点で考えてもらいたいと思うがどうか。

【教育長】子育て世代をいかに支援するかについては、社会の変化とともにいろいろ工夫をし、改善を図っていかなくてはいけないテーマだと認識している。提案事項も含めて、今後どのような支援の方法があるのか、それは常に研究をしていきたいと考えている。

 

【安田】③学用品、教材費を無償にできないか、というのは、授業に必要な教材費用がなぜ授業料に含まれないのか疑問であるし、家庭の負担が増えすぎないようにと気を付けながら教材を準備し、クラスの児童生徒の頭数で割って集金するということで、学校の現場の教員先生方が集金もされているということで、そういう手間も考えると、授業で使うワークやその場で使う図工の材料だとか、教材は無料にと思うわけですが、いかがでしょうか。

【教育長】学用品を広くとらえて答えたが、補助教材に限定しての提案だと思う。教科指導との関わりはまさにそのとおりだ。ただ、この補助教材というのは、学校の教育そのものを特色を表す内容になっている。したがってすべての小中学校に共通の教材を指定しているわけではない。そういうことも考えて、これを一律に補助の対象にとは考えていない。ただ、先ほどの、保護者負担というものをどういうふうに軽減するかという中で、こういった内容についても今後、どうあるべきかということは研究をしていかなくてはいけないと考えている。今の時点では、今すぐにこれを対象にするというようなことは、財政負担のこともあるので、すぐに実施ということは考えていない。一方で保護者・PTAの会と毎年会合をもっており、学校教育に対する保護者からの要望を毎年受けている。その中にはこういったテーマが含まれていない。多くの議論の中で、こういった考え方が高まってくる、そういった中で市としても考えていかないといけないかなと思う。

【安田】④クラブ活動費、生徒会費、PTA会費については3市も対象にしていなということですが、逆に言えば、国の調査でも、年々対象にする自治体が増えているということですので、4市がそろって対象にするというふうに協議をしていただけたらと思うが。

【教育長】4市で援助費のことについて協議をする場があるので、こういった話題を出しながら、どうあるべきか他の市とも話し合ってまいりたいと思っている。

【安田】就学援助の広報の内容の充実を求めたのは2年前だったが、今も変わっていない。このことについてご説明を。

【教育長】この制度についての広報は、まずは、教育委員会のHP、就学時の健診時に保護者に配布する資料、入学通知書とともに保護者に資料として送付している。HPについては、開きにくいという部分も含めて、見ても、「相談は受け付けます」ということが中心で、事業の概要が分かりにくいということもあった。この部分については最近改め、保護者が開いてもらえば内容が確認できるものに改善済み。また、保護者に配布する資料についても、保護者が見てすぐ内容が分かるような、分かりやすい資料に改良して案内したい。

 

【安田】子育て支援、少子化対策ということではなく、子どもの成長を社会で支えよう、また、義務教育については無償の憲法の理念を追求してということで質問してきた。いろいろと検討するという答弁もいただいたので、ぜひ、しっかりとお願いします。

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コメント: 1
  • #1

    大森正治 (木曜日, 01 11月 2018 00:24)

    子どもの成長は社会全体に責任として保障していく、その法的裏付けとして憲法の義務教育の無償化という考えが貫かれている、いい質問だと思いました。私も見習わなくては…
    大山町も昨年度から、保育料の3歳児以上の無償化、学校給食費の半額助成、高校生の通学費半額補助を実施しています。私は子育て支援や貧困対策の観点で要求してきました(後者2項目)。竹口新町長は人口減対策としての移住定住策という観点での施策だと言っています。