議員提案~セクハラのない社会を実現するための意見書
財務省福田淳一事務次官(当時)の女性記者に対するセクハラ問題で、国の中枢にいる人間がいったい何をしてるのか!と腹を立てたのは私だけではないと思います。多くの女性のみならず、男女問わず相手を尊重してかかわっているすべての国民を失望させました。監督者の立場にありながら福田氏をかばったり、被害者を加害者のように扱う暴言を繰り返し、二次被害を広げた麻生太郎財務大臣の責任も重大でした。
そもそも、セクハラは多くの場合パワハラと重なって起こっていると考えると、政府要人や官僚は確かに大きな権力を持っていると勘違いしがちだったり勘違いされがちです。しかしそこで特に女性に対して下に見たり、性的な言動をすることがまかり通っているとしたら、それはしっかり正していかなければなりません。もちろん被害にあうのは女性ばかりではありません。性被害は男性に対してもありますし、性的マイノリティ、LGBTのみなさんのいわれのない差別も根強く残っています。このままでは世界から見ても人権後進国とみなされてしまいます。
日本のセクハラ問題解決のために、政府自らが襟を正し、研修を推進し、相談窓口の設置を徹底し、加害者・被害者への対処や法的整備などをすることが必要です。私は、今回の事件を受けて、地方議会から国にしっかり意見を言わなければ、と思い、他の会派の皆さんにも賛同を得ながら意見書案文を作成し、議員団の長尾議員と、松本煕議員(社民党)に共同提出者になってもらって県所案を提出しました。議会最終日、全会一致で可決していただきました。
ちなみに、私はこれまでの人生の中で、幸い、性的被害やセクハラによって傷つけられたという経験は持っていません。16人の市議会で唯一の女性議員である私に対し、市職員も議員もみな紳士的に接してくださっていると感じています。でも、もしかしたら私の鈍感さや図太さがそう感じさせているのかもしれません。「ほかの人にこれを言われていたらどう感じられるだろうか」という想像力を働かせたら、また違う感じ方もあるかもしれませんね。人権問題は想像力です。わたしも気づかず人を傷つけていることもあると思います。お互いに、気を付けましょう。
以下、意見書案文を掲載します。
セクシュアル・ハラスメントのない社会を実現するための
意見書の提出について
地方自治法第99条の規定により別紙のとおり意見書を提出する。
平成30年6月29日 提出
提 出 者
境港市議会 議員 安田 共子
長尾 達也
松本 熙
セクシュアル・ハラスメントのない社会を実現するための意見書
今年4月に発覚した、高級官僚による女性記者に対するセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」と言う。)問題は、日本社会の課題を明らかにした。
セクハラは本人の意に反する性的な言動でその人の尊厳を傷つけ、生涯消えないトラウマとなる重大な人権侵害である。「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)とした日本国憲法にも、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃をめざす女性差別撤廃条約にも、違反するものである。
日本政府は、国連女性差別撤廃委員会など国連の人権機関から、法整備や教育など、性差別やセクハラ・性暴力をなくすための行動を繰り返し勧告されているが、締約国として義務を果たさず、政治的意思を問われ続けている。この姿勢を根本的に変えることなしに、ジェンダーギャップ指数で144カ国中114位まで落ち込んだ日本のジェンダー平等の遅れも克服することはできない。
勇気を持って告発した女性がバッシングを受けたり、多くの女性が泣き寝入りせざるをえない現状を変えるため、セクハラはどのような言い訳も通用しない人権侵害であるとの認識を、学びを通じて社会全体で共有し、その根絶にとりくむことが求められている。
よって、境港市議会は、政府が以下の項目を実行、推進し、セクハラのない社会を実現することを強く要望する。
記
1.閣僚や国会議員、官僚、地方議員、公務・民間の職場、地域、学校などあらゆる場で、セクハラや人権、女性差別撤廃条約や国連からの勧告についての研修を行えるよう、推進すること。
2.セクハラ行為者への厳正な対処や再発防止、被害者の精神的ケア強化を徹底すること。
3.官公庁に、被害者がいつでも安心して訴え、解決に向かうことができる相談窓口を設置し、専門的知識を持った専任の担当者を配置する。職場、地域、学校などにも配置できるよう支援すること。
4.セクハラの禁止を明記し、加害者への厳しい罰則、被害者の保護と救済、支援などを盛り込んだ法整備を行うこと。
5.学校教育において、ジェンダーと人権の視点を重視し、性教育を積極的に推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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